2003年10月16日、劇団四季『キャッツ』広島公演の昼公演で、公演が始まって数分後「ジェリクルソング」の終わりごろで、停電が起きたことがありました。その時の観劇記録、2幕の分です。
2003年から3年間くらい、当時は主流だった無料ホームページスペースに作ったサイトに乗せていた観劇記録から整理しました。
2003年10月16日『キャッツ』観劇感想~2幕
「幸せの姿」の前は、花道に近い席なので、タントが出てくる穴を見て見ました。ひじをついている姿勢が「出窓から外を見ている令嬢」のようでした。
昨日はギルとタントが正面をむいたところを見逃したのですが、今日は取り立てて変わったことはないのに、振り返っただけで笑い声が起きていました。うーん、ということは昨日も別に変わったことはなかったのかもしれません。
何回、体験しても、マンカスが通る席に座ると、「この歩いてくる人は誰?」と一瞬だけ思うんですよね(笑)。あんなにゆっくり歩くお客さんはないだろう。
ランペルとシラバブは、真鍋さんが入ると普通の歩き方になります。松永さんと王クンさんのときは「コテコテコテ」という歩き方なので、池田さんは相手によって変えているわけだ・・・
劇中劇「グロールタイガーの最期」で、靴磨きしているときのスキンブルの口元が微妙にゆがんでワナワナ。
スキンブルをたきつけているのはマンゴですが、マンカスもあおっているような。
「狙われたものは皆哀れ」と膝に手を置いて首を振るマンカスの「やれやれ」という感じが、昔話を子供に語っている人、のようでした。
タガ-がグリドルボーンを迎えに行っている間、マンゴは上手階段に上がってぴょんぴょん跳ねていました。
広島で上手前方席に座るの、初めてなのですが・・・福井タガ-のお迎えの言葉は「美しい!!はっはっは(ものすごく良い声で響く笑い声・・・)」。
上手席なので見えないかな?と思っていた、「ミストを回収にくるマンカス」、見えました。思いっきり手招きしていた。
鉄道猫ナンバーの、ヤクザが出てくる前、コリコと舞台奥に引いた望月ミスト、今日は尻尾マイクで歌いつつステップ。すぐに谷本コリコが気づいて、ミストのまねっこ。
千葉ギルがヤクザに向けて跳び蹴りの後は、今日はランパスとガッツポーズ、ではなくギルが右手を高く上げて親指を下に。
列車が壊れて、起き上がったスキンブルの情けなさそーな顔と、あーあー、と肩をすくめるの、これは初めてみたかも。
「マキャヴィティ~マキャヴィティファイト」
上手花道の壁からマキャが出た後、マンカスが一足送れてやってきて、バン!と壁を叩くのですが、壁、壊れそうな勢いだった・・・。
その後、ジェニーさんがやられて、ギルがやられて、タントがつかまって、という間にだんだんマンカスが舞台に戻っていく、そこで、マキャが動くたびに表情が変わっていって、最後は「このやろう!!」というものすごい顔に。
赤瀬マキャも笑い声が入る個所が増えている気がします。しかも、昨日から担いだマンカスを落とした後、振り上げた手が一度はマンカスに当たっている(演技上です)のですよ。前は振り下ろそうとしたところで猫達が止めに入っていたと思う。今回は二度目に手を上げたところで「このやろう!!」状態の猫達がマキャを囲んでいました。で、仰向けに倒れるマンカスが思いっきり背中の真中から落ちていた(これは本当に床にぶつかったのでないかな・・・)。
はああ。近くで見たせいかもしれないけれど、なんかすごかったです。
「ミストフェリーズ」、今回は席が近いせいか、または2日目ということで動きが大きくなっていたのか、ミストのダンスは前日(広島初出演)よりも、ダイナミックに感じました。前の日だって良かったのですが、つなぎのところが本当に「つなぎ」に見えたことが何箇所があって、少し気になったのです。でもこの日はきれいにつながって見えました。
望月ミストはダンスもよいんですが、私は表情が良く見えるくらいの席が楽しいかな。
登場してからちょっと間を置いて、肩のスパンコールを取る動きでライトをつけ、蔡ミストが耳の横で足を持つところは片足をシュッと水平に上げてのシャープな回転。
望月ミストは上着、最後まで自分で脱いでいますね(蔡ミストの時は片袖はタガーが手伝う)、で、ステッキ取り出すはとってもさりげない。タガーでなくても「え?」と思うくらい。
で、近寄ってきた4匹を止めるのは最初の2匹はとんとん、とあっさり。次に少し溜めて、とメリハリがよいと思います。その後のステッキ回しがお見事。華やかに見えます。
福井タガーの「マジカル」を上げるアレンジをしばらくぶりに聞きました。
この日も望月ミストは舞台1周のあとの「シーッ、静かに」をしなかったのですが(してないはず・・・見逃していなければ)、それでも客席はなんとなく雰囲気で静かになるものですね。
出現マジックの展開は、昨日はたまたまかと思ったのですが、やっぱりすごく早い。ランパスと赤い布を広げて後ろに移動していくときには、「はいはいはい」と少しおどけた表情をしていましたが、後は結構シリアスな感じ。
タガー、ミスト、マンカスの3人が舞台の前に出てきたところで、ミスとは左右の二人の手をパンパンと叩きますが、まるで「ホームランを打った野球選手」みたいに思いっきり叩いていました。その前のマンカスの「ミスト!」も今日はしっかり聞こえましたし、そういうノリだったのでしょう。最初にあんなことがありましたから、みんな気合が入っていたのかもしれません。
通路に拍手にくるネコは池田リーナでした。
望月ミストは舞台中央からデュト様のところに行くのもすごく早いのか、マンカスがデュト様の後ろに入る前に膝にぎゅうっと抱きついていて、それをマンカスが両手を広げて見守っていました。
しかし、あの左右非対称のジャンプ・・・なんていうのだろう?かっこいいんですけれどね。
そのあたりで耳元で大きな歌声が。「耳元?」と振り返ると、岩城スキンブルが膝をついて座っていました。6列、5列、4列と少しずつ移動していたのですが、何度かこちらを振りかえってくれたので、すごく嬉しかった。
2幕メモリーが終わり、「天上への旅」での他のネコの様子も見たい、と思っているのですが、結局はマンカス、ミスト、ランパスになってしまう。今回はやっぱりミストです。タイヤの上では完全に後ろ向きではなくて、少し斜め、下手側を向いていました。振り返るのは、1コーラス終わって、グリザベラがひざを追ったところ。これは、見ていなくても気配で何かが動いたことがわかるのかも知れない。
この日は、望月ミストはグリザベラに対しては最後の最後まで、個人的な感情は一番出てこないように感じました。他のネコと比べても、他のミストキャストと比べても。
1幕からこのメモリーで手をとるところまで、自分の好き嫌いを超えたところで判断して動いているような気がします。そういう意味では一番クールな目を持ったミストかも知れません。で、もしかすると彼の心が動いていることが見て取れるのは、「天井への旅」で、手の届かない距離に離れたグリザベラを一人で見送っている時の後ろ姿なんじゃないかと思います。蔡ミスト、坂本ミストもそれぞれ一番、気持ちの動きが感じられるポイントが違うので、こういうのは面白いですね。
アドレッシング終わったところで、そうだ、ランパスのカーテンコール待機、と気が付きました。
で、するするっとスロープを滑り降りてきた百々ランパスがまっすぐこちらへ接近。ひたっ。と見つめられました。あれ?前にもこんなことが・・・先月下手端っこ席で百々マンゴと遭遇したときだ。今回は特に手を出したりはしてこなかったのですが、少し顔や体の角度を変えながらそこに「いる」というのが、本当に猫と見詰め合っているみたいでした。こちらが首を傾げて見せたら、後ろに引いて、一度舞台を向いてからまた戻ってきました。じっと見られていると、ちょっぴり、こちらの居方に困る・・・そのうち向こうを向いてスロープに伏せ、くるくる顔を洗い出しました。このときのぽわん、としたかわいらしさと、舞台に上がってジャンプ、ポーズしたときの精悍さはまるで別猫(笑)。
王クンジェミマのカーテンコールのポーズは、片足を後ろに上げて頭の上から手でつかむ、フィギュアスケートのキャンドルスピンみたいな形でした。
最後に全員が前に出るところで、マンゴ、ミスト、マンカスが顔を見合わせてタイミングを取るの、望月ミストで見られるとは思っていませんでした。
握手はタガーと。逆光でお顔はよく見えませんでしたが、しっかり、丁寧に。後ろの席の方達は幕間に「あの人男前じゃねえ」とタガ-がお気に入りになったようだったので、握手もとっても喜んでいました。
望月ミスト、表情というか、演技がすごく興味深い。
同じ年頃だろうと思われる(といってもミストって年齢不祥なところはありますが)猫達とじゃれているときの元気な若ネコの表情、舞踏会やミストナンバーでのクールな表情、グリザベラがその場にいるときの直接は見ていないけれど何か伺っているような顔。それから笑顔なのに、それが「顔」ではなくてお面のように見えるときがありました。別に作り笑顔をしているという意味ではなくて、道化役を「演じている」ような感じです。
道化的、トリックスター的、というキャラクターが他の二人とそう違っているとは今回2回見たところでは思いませんし、おおよそこのシーンはコミカル、この辺はシリアス、というのも同じようような感じなのに、どう表現するか、そしてそれがどう見えるか、というのはキャストによってすごく違っているものですね。
それから23匹の中での位置付けは3人ともそれぞれ違っているように見えます。個人的に勝手に思っているだけなのですが、蔡ミストと坂本ミストには、それぞれ、「ここだけは本音が見えているのかな」と思うシーンがあります。望月ミストにも、それが見つけられるかな。ぜひまたお目にかかりたいです。
停電にはとにかくびっくりしてしまいましたが、20分でリカバリーできた、というのはすごいと思いました。その後の舞台は本当にいつもどおりでした。
いきなり止まったら役者さんがケガしそうなシーンはたくさんありますから、止まったのがオーバーチュアでラッキーだったのかも。
無事に上演できて本当によかったです。
後日、劇団から、停電の原因は、中国電力の送電設備の故障であることと、
終演時間が遅くなったことで途中で帰らなければならなくなった人には払い戻しがある、というお知らせがありました。
演出変更についての補足
『キャッツ』は公演地ごとにマイナーチェンジがあり、
さらに、2018年東京公演ではかなり大きなリニューアルが入りました。
2003年は、基本的には2016年~18年の大阪公演とあまり変わらないのですが、それでも変わっている個所があるので、少しだけ補足しておきます。
ラム・タム・タガー~突っ張り猫
2018年東京公演からは、お客さんを舞台に上げる演出がなくなりましたね。
ただ、この観劇記録には、どんなお客さんがさらわれたのか、が書いてなくて残念。
バストファージョーンズ~大人物
「ご馳走シーン」とは、
当時は、今のように、食べ物のオブジェをネコたちがバストファさんに運ぶのではなく、
バストファさんの左右に座ったオスネコが、パントマイムでご馳走を渡す、という演出でした。
上手がスキンブルシャンクスとカーバケッティ、
下手がミストフェリーズとギルバートで、
その日によって、自分たちでご馳走を食べてしまったりそれがおいしかったりまずかったり、シラバブにわけて上げたり、という違いが楽しかったです。
15年ぶりに振り返って
停電した、という印象がとにかく強くて、
初めて見た望月ミストの印象が多少飛ぶくらいと思っていましたが、メモを見るとちゃんと書いていますね。
この当時、マンカストラップ役はほとんどが趙宇(のちに西門翔宇、という日本芸名になりました)さんで、
この趙マンカスと、赤瀬マキャの本気ファイトの迫力がすごかった。お二人とも、大きな人ではないんですが。
なんか、もうこういう詳細な観劇メモは書けないかもなあ、とちょっと自分で思ったりしますが(笑)、ちょっと挑戦してみようかなあ。