「嵐の中の子どもたち」の初演は1981年。
その後、全国公演、児童招待公演、クリスマスチャリティ公演として上演されてきて、2016年12月に初めて東京での連続上演が行われました。私が初めて観たのも、2016年12月~2017年1月の東京公演が初めてです。
個性がはっきりした子どもたちのキャラクター
機関車が走る!迫力のクライマックスシーン
ダイナミックなダンスや乱闘シーン
冒険ものの楽しさ
タップして飛べる目次
劇団四季ファミリーミュージカル「嵐の中の子どもたち」ってどんな作品?
物語は、通信手段が無線、交通機関は蒸気機関車だった時代のアメリカが舞台。アンデスのエルドラド伝説が出てくるのでメキシコに近い位置なんですかね・・・?
「ヒルズ・エンド」「子どもだけの町」という、2つの児童文学を元に
自然災害の中、孤立した状況に取り残された子どもたちが協力し合う
という部分を取り出して再構成した脚本となっています。
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「嵐の子どもたち」のあらすじ
ハミングバード村の子どもたちは優等生グループと、落ちこぼれの山賊団に分かれていつもケンカしています。
大人たちは、大切な開拓記念日にも騒ぎを起こした子どもたちを残して、式典のためにヒンメルの町に出かけてしまいます。
楽しみにしていた町のお祭りへ出かけられなくなった子どもたちは、山賊団のリーダー、ボブが見つけたというエルドラドの遺跡を探しに行きます。実はボブは嘘をついていたのですが、子どもたちは動かした石像の後ろに本当に遺跡があるのを発見して大喜びです。
ところが、その時、付近を数十年に一度の規模の嵐が襲います。やっとのことで村に戻った子どもたちに前には、壊滅した村が。
交通や通信は遮断され、村は完全に孤立してしまい、町に行った大人たちの安否もわかりません・・・
子どもたちは力を合わせて村の復旧を進めていきますが、優等生グループと山賊団は再び仲たがい。そんな中、嵐で体調を崩してたビッキーの容態が急変してしまいます・・・
「嵐の子どもたち」のキャラクター
<山賊団>
ボブ 山賊団のリーダー。仲間思いで優しい心を持っていますが、見得や意地を張ってトラブルになることが多い。
ダンプ 機関士の息子で力持ち。
ブラックジョー 乱暴な言葉使いでぶっきらぼうですが、実はダンプやポーをかばって喧嘩になっている面も。
ハッチ ちょっとぼーっとしたところがあり、ボブをとても尊敬している男の子
ジェロニモ 先住民の子で言い伝えに詳しく天気の変化などに敏感
ポー 決まりを押し付けられたりみんなと同じことをしなければならなくなるとパニックになる男の子
リンダ ボブがみんなのリーダーにふさわしいと考えている女の子
セシリー いつも落ち着いて状況を判断している大人っぽい女の子
<優等生グループ>
ケン 優等生グループのリーダー。頭が良くて正義感が強い。
フローラ 優しく、思慮深い女の子。
ビッキー 分教場で一番年が小さな男の子。ボブとケンのどちらも大好きで、仲良くしてほしいと思っている。
ブブ 好奇心が強くおしゃべりな女の子
モールス 機械好きの男の子
教授 発電所長の息子で、博識で研究熱心
パック シェイクスピアなどの文学作品が好き
プルーシー しっかり者で行動力があり、思ったことをはっきり言う女の子。。
カロリー すぐに「お腹が空いた」と言うだけあって、とても料理上手な女の子
レイジー 心配性で泣き虫な女の子
<大人たち>
村長、校長先生、マーマレード(ケンのお母さん)、親方(ボブのお父さん)、大人の女性
「嵐の中の子どもたち」にはアンサンブルキャストがなくて、ほとんどの役が1人で1つの役を最初から最後まで演じる「通し役」です。
一人二役を演じるのは、この3つの組み合わせだけ。
村長/モールス
ボブの父/ダンプ
大人の女性/レイジー
その他の役は、一人の俳優さんがずっと同じ役で舞台の上にいるので、ファミリーミュージカルの中でも、ひとりひとりのキャラクターの区別がしやすい作品です。「エルコスの祈り」も同じ感じですね。
「嵐の中の子どもたち」のテーマ
「嵐の中の子どもたち」のテーマは、「勇気、希望、友情の大切さ」。
子どもたちは平時には二つのグループに分かれて喧嘩ばかりしていましたが、自然災害に見舞われた後の、大人がいない状況で、協力しあうことを余儀なくされます。
ですが、状況が少し落ち着いてくると、もともとの価値観の違いなどから再び争いが起こりますが、ひとりの仲間に「生命の危険」が迫る状況になってしまい、子どもたちは、お互いの能力や個性を認め合い、その状況に立ち向かいます。
メインのストーリーである、被災化のサバイバル、とは別に、子どもたちが発見した「遺跡」が伏線になるラストがさわやかです。
劇団四季ファミリーミュージカル「嵐の中の子どもたち」の見どころ
ビジュアルや音楽のイメージは公式PV動画をどうぞ。
個性がはっきりした子どもたちのキャラクター
「嵐の中の子どもたち」には、18人の子どもたちが登場します。
大きく分けると、
ボブがリーダーの山賊団:勉強をしたり規則を守ったりするのが苦手なやんちゃな子どもたち
ケンがリーダーの優等生グループ:大人の決めたルールを守る子どもたち
なのですが、さらに、
うまく自分を表現できないけれど「人の役に立ちたい、みとめられたい」という気持ちが強いダンプ
思ったことをはっきり口に出すのでトラブルにもなるけれど、行動力があるプルーシー
など、ひとりひとりの個性が際立っています。
「自分もあんなところがあるな」「友だちに似ている子がいるな」というキャラクターが一人は見つけられるのではないかと思います。
そういう点では『キャッツ』に似ていますね。
また、
ルールを押し付けられるとパニックになるポー
心配性ですぐに泣いてしまうレイジー
のような、一見ネガティブに見える特性を持った子供も仲間外れにはされていません。
ただ、優等生グループは「山賊団が落ちこばれなのは自分が怠けているから」と決めつけているのに対して、
山賊団のメンバーは、勉強ができないのは、自分の特性や環境のために「努力してもできない、あるいは努力すること自体無理」と考えていて、ブラックジョーのように「だったらラクして生きたほうがいい」と開き直っている子もいます。
一度は協力し合った子どもたちは、この溝が露呈して再び仲たがいしてしまいますが、その後襲ってくる本当の危機では、こんどこそ、それぞれの個性を認め合って協力します。
機関車が走る!迫力のクライマックスシーン
「嵐の中の子どもたち」では、大きな機関車が舞台の上を走るシーンが何度かあります。毎日移動しながら、設営・解体を繰り返す全国公演で、この装置を使うのはかなり大変なのではないかと思いますが、機関車のシーンは大人が見ても迫力があります。
特に、肺炎が重症化してしまった仲間を助けるために子どもたちだけで機関車を動かすシーンは緊迫があり、とても盛り上がります。
ダイナミックなダンスや乱闘シーン
「嵐の中の子どもたち」のダンスシーンは、子どもの生き生きとした様子を表現するため、バレエよりもジャズの要素が強く、音楽もポップス調です。
また、対立する2つのグループが喧嘩になった場面は、ダンスと照明で迫力のある乱闘シーンになっています。
やんちゃでワイルドなボブ、端正なケン、と個性のある振り付けの違いも見ていて楽しいです。
冒険ものの楽しさ
自然災害、という深刻な状況ではありますが、
劇中でブブが「でもキャンプみたいで楽しいわ」というように、大人がいない世界で、なんでも自分たちで決めて行動する、というのは、子どもたちにとっては大きな冒険でもあります。
また、前半のエルドラドの遺跡探しは、大人にとっても「宝探し」や「虫採り」のワクワク感を思い出させてくれる楽しさがあります。
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これは、よこはま動物園ズーラシアの中の施設ですが、「嵐の中の子どもたち」の遺跡のイメージに近いです。
発電機を修理する教授とブブのやりとりや、ボブ・ブラックジョー・ジェロニモが分教場に食料をどろぼうに入る場面は爆笑必死なので、お見逃しなく。
劇団四季ファミリーミュージカル「嵐の中の子どもたち」のDVD
「嵐の中の子どもたち」はDVDも発売されています。
収録されているのは、2010年10月の公演です。
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劇団四季ファミリーミュージカル「嵐の中の子どもたち」はここが楽しい! まとめ
「嵐の中の子どもたち」は主に物語を動かすキャラクターがボブ・ケンという二人の少年で、喧嘩シーンも多く、どちらかというと男の子向きの作品なのかな、と思っていましたが、友だちの子どもたちの様子を見ていると、女の子(4、5才)にも人気があります。
「嵐の中の子どもたち」には、一緒に歌うなどの客席参加の演出は全くないのですが、登場する子どもたちの冒険をハラハラ・ワクワクしながら見て映画のように楽しめるのだと思います。
終演後、ロビーでの出演者によるお見送りは、他のファミリーミュージカル作品と同じように行われますので、お気に入りのキャラクターにぜひ近くで会ってくださいね。