こんにちは、あおなみ(@aonami491)です。
前に、劇場で、隣になった方に訊かれたことがあるんです。ちなみに、初対面の方です。
「『アラジン』って、どのシーンが一番おすすめですか?」
「え。いやあ、全部ステキなシーンばかりですけど、魔法の絨毯ですかねぇ。」
その時はそう答えたんですけど。
もちろん魔法の絨毯のシーンは自分も何度見てもワクワクするし、初めて観る人に向けては、やっぱり、この「ア ホール ニュー ワールド」、または「フレンドライクミー」、「プリンス・アリー」といった、華やかなシーンは、見どころとして伝えて間違いないと思います。
でも、個人的な「好きなシーン」はまた別にあるんです。
この記事では、あおなみが好きな『アラジン』のある場面について語ります。
ネタバレです。これから観劇予定の方はご注意ください。
あおなみが、好きな『アラジン』の場面
アラジンのソロナンバー「自慢の息子」、
ではなく、その前の場面が好きなんです。(「自慢の息子」はとっても良い場面ですが。)
アラジンはこじきの老婆を突き飛ばしたアブダラ王子の従者を咎めて、斬り殺されそうになります。
なんとか殺されることは間逃れますが、王子に、もし家族が生きていたらお前は家族の恥さらしだ、と嘲笑され、
アラジンは盗みをやめてまっとうな人間になろうと改めて決心する、
(→この決心が、亡くなったお母さんの自慢の息子になろう、という歌につながります。」
という場面なのですが、
私が注目しているのは、男性アンサンブル7枠が演じている、下手にいる屋台の果物屋さん。
この人、商売があんまりうまくいっていないんですよ。
屋台の果物に触ろうとした老婆を追い払った後、赤ちゃんを抱いた女性(女性アンサンブル5枠)に声をかけますが、
すぐにアラジンのアブダラ王子たちのいざこざが発生。
騒ぎが一応収まっても場の空気が買い物どころではなくなってしまいます。
アブダラ王子に声をかけて振り払われ、その後も何人かに断られ、
果物屋は屋台を押して去っていきます。
果物屋に、アラジンは「きっとまっとうな人間になってみせる」と言いますが、果物屋はちらっと振り返っただけ。
アラジンは、その場しのぎの生き方を変えようとしますが、
その横で、堅気の商売をしていてもあまりうまくいっていない人を見せているところが好きなんですよね。
果物屋がこじきの老婆に優しくないのは余裕がないからかもしれない。
演じる俳優さんによって、今日は売れねえなあ、ってことなのか、このところずっとシケてるのか、見え方が違います。水原俊さんなんかは結構生活に疲れている感があるんですけれど。
ちらっとアラジンを振り返るのは、
「おまえのせいで商売がうまくいかなかったんだぞ」という風にも見えるけれど、
今は最下層に近いところにいてもまっすぐな若者が、少しうらやましいのかも、とも思います。
まっとうな人間と「ダイヤの原石」
ストーリー紹介などでは、魔法のランプを手にしたことでアラジンの運命が動き出す、としていることが多いのですが、
私は、この場面で、理想の自分に向けて、踏み出したことが、最初のきっかけだと思います。
「まっとうな人間になって見せる」決心をしたアラジンは盗みをやめてストリートパフォーマーにチャレンジするけど、それ自体はうまくいかずに起業には失敗。
しかしジャスミン、そしてジーニーに出会い、どんどん、事態が動いていきます。
物語の最後、アラジンがたどり着く「自由」は外的な条件に関わらず、自分の信じた選択をすることです。
この時、こじきにパンをあげたことも、こじきを突き飛ばした王子の従者に抗議したことも、アラジン自身の自由な選択で、そういう意味ではすでに自由はアラジンの手の中にある。
ただ、本人が嘘つきで泥棒という状態で正論を言っても「おまゆう」だけれど、
最後には、アラジンは偽りの王子であることをやめ、ジーニーのとの約束を守ることを選び、それがサルタンにも、周りの人たちにも支持されるんですね。
結局、アラジンは最後までコツコツ働いたりはしないんですが、でも最後の場面のアラジンはまっとうな人間といっていいと思います。
昔話では、必ずしも勤勉で真面目ではないものが、すごい幸運に見舞われる、というお話があります。
日本の昔話でも、三年寝太郎は3年間寝ていたわけだし、ばかと呼ばれていたものが出世するお話もたくさんあります。
アラジンはそこまでエキセントリックじゃないけど、その手の昔話とベクトルは同じだと思います。
3つの願い、は昔話にはよくあるモチーフで、それで失敗する(まさに、ランプを手に入れたことを後悔するような)話も多いです。
誰もが幸運を願うけれど、高額宝くじが当たった程度のことでも、幸せじゃない方向に行ってしまう人もいますよね。
ジーニーの魔力のようなとてつもないパワーを手に入れて、それにつぶされないって大変なことで。
アラジンは、ジーニーに、君だったらどうする?=3つの願いがかなうとしたら何を願う?という質問を、すごく自然にしますが、そういうところにダイヤの原石としての資質が現れているように思います。
『アラジン』で一番好きな場面 まとめ
私がこの場面が好きなのは、
何度か観劇している間に、自分なりの見どころを、この場面に見つけたからだと思います。
アラジンが、こうなりたい自分に向けて進みだしたことと
現実の生活ではなかなかそうはできないことがある、ということが並べられていることと、
大きな幸運をつかみ、しかもそれにつぶされないって、どういう人なのか、ということが、この短い場面で見たことで考えられるんだなあ、と思ったから。
人間の価値は、実は定職があるかどうかと直接には関係なくて、人とか、物事に、どれだけ誠実に向かい合うかですよね。
その一つの表れが、仕事になる人も、現実社会では多いと思いますけれど。
でも、私は、商売がうまくいかなくてイライラしていた果物屋みたいな人の存在も愛おしいし、アラジンを目の敵にしている衛兵隊長ラズールも、けっこう好きなんですよ。
いろんな視点を持てるところが、何度観てもまた観たくなる理由だろうと思います。
昔話で描かれている、人の心理、成長、自己実現などの解釈は、こちらの本を参考にしました。
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