劇団四季ァミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」2018年1月8日自由劇場での公演を観たときの感想やキャストをまとめました。
※2017年12月22日にも観ているので、その時も感想も少し入ります。
※感想はネタバレ込みです。
(過去に書いた観劇メモを再編集しました。基本的に、その当時、感じたように書いています)
あらすじや作品の見どころはこちらにまとめました。
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劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」2018年1月8日のキャスト
王様 | 牧野公昭 | 将軍ボイルドエッグ | 中橋耕平 |
ローストビーフ卿 | 青羽 剛 | 床屋 | 権藤雄太郎 |
アブラハムハム侯爵夫人 | 八重沢真美 | ニボシ | 神保幸由 |
黒い探偵 | 鎌滝健太 | ナタネ | 田原沙綾 |
詩人チキン | 宇都宮千織 | 陽だまりの精 | 小林由希子 |
男性アンサンブル | 女性アンサンブル | ||
(ナマボシ・ミリンボシ)志藤大造 | (ウメボシ)松尾千歳 | ||
(キリボシ)村田晃一 | (アンズ)中村ひかり | ||
(町の男たち/木の精/兵士)市田繕章 | (スモモ)小山百合恵 | ||
(町の男たち/木の精/兵士)田川雄理 | (バラの精)柿野麻季 | ||
(いばらの精/将軍)文永 傑 | (蝶の精)小澤真琴 | ||
ー | (露の精)杉野早季 | ||
ー | (綿毛の精)深沢萌華 | ||
ー | (町の女たち・朝焼けの精)林 美菜子 | ||
ー | (街の女たち・夕暮れの精)池浦紗都子 |
劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」2018年1月8日の感想
作品紹介の方の記事にも書いたのですが、
「王様の耳はロバの耳」は、登場人物の匿名性が高くて、特に主人公であるはずの床屋は、あまり色がない性格なんですよね。父親のナマボシとの関係もほぼ語られませんし。
ただ、歌の内容から、きまじめな職人肌ではなく、感性が豊かで手先が器用なアーティストであることや、楽天的な性格であることは伺えます。
加えて、権藤さんの床屋は、素直な好青年で町の大人たちからかわいがられていそう。
この東京公演の最初の方で観た鈴本さんの床屋はより天真爛漫な感じです。
人のいいお兄さん風イメージが強かった鎌滝さんは、黒い探偵役の嫌味な悪役ぶりが思った以上にはまっていて楽しいです。
黒い探偵は、町の人たちを「この口 告げ口 あいくちだ。人を刺すのはわけもない。」と言って(歌って)脅します。
言葉遊びでコミカルに見せていますが、あいくち=匕首は、鞘と柄がぴったりと合う短刀のことで、黒い探偵は自分は舌先1つで人を死に追いやることができる、と言っている、実はおそろしい場面。
詩人チキン役の宇都宮さんは、「オペラ座の怪人」アンサンブルでは未見で、今回が初めて見る俳優さんです。
将軍ボイルドエッグとアブラハムハム侯爵夫人が王様の噂話をしている様子を見て、隣に立っている将軍(文永さん)に「あんなこと言ってまずいよね?」と心配そうにしていたり、床屋の歌に思わず乗ってしまったりするのが可愛いです。
顔の若い感じに対して、声は落ち着いたバリトンで、これからシンガーの役で活躍されそうな方ですね。
この場面の、アブラハムハム侯爵夫人(八重沢さん)、将軍ボイルドエッグ(中橋さん)の、「日課の歌」は、パントマイム風の振りが楽しいですが、淡々と歌っているようで、その陰にしたたかな2人の表情がうかがえます。
「王様の耳はロバの耳」はタイトルでもあり、メインナンバーの歌詞でもあり、セリフの中でも「王様の耳はロバの耳~♪」の部分だけは歌なんです。
ミュージカルは突然歌いだすから不自然、と言う人がいますが、本当に不自然に感じるような作品があったらそれは脚本か、曲か、パフォーマンスに問題があるのでなければ、後は好みの問題だと思います(・・・言っちゃった 笑)。
だって、「王様の耳はロバの耳~♪」は、普通の会話の中でそこだけが歌なのだから、この上なく「突然歌いだす」なんですが、それがものすごく効果的に使われているんですよ。
初めて「王様の耳はロバの耳~♪」が出てくるのは、床屋が王様の「ロバの耳」を目にした場面で、「歌」にすることでその驚きを表しています。
それが、2幕では、同じ「王様の耳はロバの耳~♪」でも、床屋の「本当のことをいうんだ」と吹っ切れた気持ちや、彼の本来の楽天的な性格が表現されています。
また、陽だまりの精が町の人たちを説得する場面で「王様の耳はロバの耳~♪」というのは、妖精が人の世界の身分やルールを超越した存在感であることも伺えますし、
普通にセリフで「王様の耳はロバの耳」と言ったのでは、禁じられている言葉をあっさり口にしている、ということの、ここまでのインパクトはなかなか出せないでしょう。
陽だまりの精役の小林由希子さんは、『リトルマーメイド』アリエル役や『キャッツ』ジェリーロラム/グリドルボーン役で観たことがあるのですが、ふんわりしたお嬢さんらしい雰囲気があって、それが陽だまりの精の浮世離れした、もしかしたら本当に地面から数mm浮いているんじゃないか、という感じにつながっています。
デビューは「オペラ座の怪人」のバレエダンサー(女性アンサンブル)だったそうですが、私が舞台で小林さんを初めて見たのがアリエル役なので、初めて小林さんのバレエを見られました^^
女性の森の精枠は『キャッツ』ヴィクトリア役・「アンデルセン」外国の王女役の杉野さんもいますし、
男性の森の精役は「アンデルセン」バレダンサー役の市田さん、田川さんと文永さんはどちらも『キャッツ』マキャヴィティ役で、ダンスシーンがすごく豪華。
後でも書きますが、今回前日予約なのになぜか2列目だったので、
1幕最後の「森はいつでも生きている」のダンスシーンがすごい迫力。イバラの精・文永さんがアクロバットするところでびゅんびゅん風が来ました(笑)。
田川さんはバレエダンサーではないのですが、軸が通った端正な踊り方だなあ、と思います。
2幕のクライマックスの歌合戦では、下手奥で、床屋にすごいいきおいで説得し倒されていました(笑)。今回公演では黒い探偵役では見られなかったので、全国公演でチャンスがあるといいなと思います。
終演後のロビーのお見送りは、22日とは反対サイドを通って、神保さん(ニボシ役)、田川さん、小林さん、柿野さん、権藤さんにご挨拶できました。
千穐楽日だったからか、いつもよりも皆さん少しじっくりお話ししてくださったように感じました。
観劇メモを振り返ってみて
「王さまの耳はロバの耳」は、2004年に初めて観たのですが、今回の公演は、その時とは印象がまったく違いました。
2004年もおもしろかったのですが、今回の公演は、言葉遊びのテンポのよさや、ダンスの切れが抜群で、「王様の耳はロバの耳」という印象的なフレーズの効果も際立っていました。
床屋の父親ナマボシはじめ、他の床屋はどうなったのかが気にならなくもなく、フィナーレで彼らも登場して「無事でよかったね」となるといいのですが、なにしろ、ナマボシとミリンボシは同じ俳優さんなので出てこられない(笑)。そこは「たぶん、あの後みんなお城から戻ってきたんだね」と想像しておきます。
というか、実際に観ている時には、そこはちょっと忘れているくらい、スピーディな展開なのですが。
今回公演で2回観て、主題の「本当のことを言う勇気」は、物語では主に床屋側から描かれているのですが、王様の側からの「真実に向き合う勇気」でもあるな、と思いました。
2幕で床屋が「(みんなで真剣に訴えて)それでも醒めない、そんな悪い眠りなんてないんだ」と言いますが、王様は自分の現状に目をつぶって、まさに眠っている状態なんですね。
このお話を一人の人間の心の中のできごと、として考えてもおもしろいですね。
補足・この日の自由劇場の前日予約について
この日はもともと観劇する予定ではなく、当日券の前日予約をしたのですが、私の席は2列上手でした。
普通、自由劇場でのファミリーミュージカル作品の前日予約席は、
4列下手端の11、12番(9と10は事故席扱いで販売されない)から始まり、次は6列なのですが、
2列なんて前日予約で出たことがないのでびっくりしました。私の隣の席の、やはり前日予約の人と前の列のお友達との会話がちらっと耳に入ったのですが、前日予約で2階席の1列目になった人もいたそうです。
センターブロック最後列の一部は、前日予約で売り出されることが多いのですが、
この日は、「王様の耳はロバの耳」カンパニーの、千穐楽は出演しなかった俳優さんたちがセンターブロック最後列で観劇されていました。
それで、センター2列目や2階の1列目の一部を代わりに前日予約席にしたのではないか、と想像しています。