こんにちは、あおなみ(@aonami491)です。
この記事では、劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」は見どころを紹介します。
「王様の耳はロバの耳」は、1965年(昭和40年)に第2回日生名作劇場として初演され、それから現在まで50年以上繰り返し上演されてきました。
ファミリーミュージカルの中でもかなり「古典」に入る作品です。
私が初めて観たのは、2004年の全国公演で、その時のタイトルは「王様の秘密」。
床屋役は佐野正幸さんでした。将軍ボイルドエッグ役で神保幸由さん(2017年12月開始の東京公演、2018年開始の前項公演ではニボシ役)、木の精/兵士役で、岩城雄太さんが出演されていました。
「昔話」としてのおもしろさ
寺山修司が書いた脚本のおもしろさ
「王様の耳はロバの耳」という言葉が、旋律とともに繰り返される構成
狂言回し役の語り掛けや、「一緒に歌ってキャラクターを応援する」客席参加型の演出
クラシックバレエやクラシック音楽の要素がふんだんに盛り込まれている
小さなお子さんと一緒に楽しむこともできますし、また、大人だけで観ても、見どころ・考えさせれる点も多く、ぜひ「作品」として楽しんでいただきたいです。
ファミリーミュージカルは何才から観られるの?どこで上演しているの?などについてはこちらにまとめました。
当記事は、公演プログラムに書かれているあらすじ以上のネタバレは含みません。
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劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」ってどんな作品?
「王様の耳はロバの耳」の初演は1965年。
劇団四季公式サイトの作品紹介では、ギリシャ神話の中の、ミダス王が神さまにロバの耳に変えられた、というエピソードを基に、寺山修司が脚本を書いた、と説明されています。
むかしむかし。
ある理由で「ロバの耳」になった王様にはお抱えの床屋がいます。床屋は当然、秘密を守るように命令されていますが、黙っていることに耐えられなくなり、穴を掘って「王様の耳はロバの耳ー!!」と叫ぶと、穴の周りの葦が風に揺れ「王様の耳はロバの耳ー!」と繰り返したため、「王様の耳はロバの耳」であることは人々に知れ渡るようになりました。
こんなお話を、「イソップ物語」として、絵本で読んだり、子ども向けのアニメなどで見たことがある人が多いのではないでしょうか。
イソップ寓話(イソップ物語)は、紀元前6世紀ごろ、ギリシャのイソップ(アイソポス)がまとめた、とされていますが、
- ロバの耳になるのは王様ではなく王子であるバージョン
- ロバの耳ではなく「ウシの耳」のバージョン
- 王様の秘密が「動物の耳」ではないバージョン
- 王様の秘密を広めるの葦ではなく、たんぽぽなど他の植物であるバージョン
- 秘密を知った床屋が殺させて埋められた場所に生えた葦から作られた笛が「王様の耳はロバの耳」と歌う
王様の秘密を知った床屋が、秘密を守り続けることに耐えられずに悩んだり病気になったりして、「人ではないもの」に話すならいいだろう、と話すと、「人ではないもの」によって王様の秘密が広められてしまう、という部分はほとんどのバージョンで共通しているようです。
結末は、秘密がみんなに知られたところで終わるものや、
「みんなが知っているならもう隠す必要はない」と王様が帽子を取ると、人間の耳に戻る、などがあります。
劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」は、このような寓話を寺山修司がアレンジした脚本で、現在上演されている舞台はそこからさらに改訂されたものです。
劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」あらすじ
ある国に、とてもわがままな悪い王様がいました。王様が召し出した床屋は、だれもお城から帰ってこないので、とうとう、国の床屋はたった一人になってしまい、みんなは髪もひげも伸び放題になって、困っていました。
とうとう、そのたった一人の若い床屋も王様に呼び出されます。
町の人たちは心配しますが、床屋は「王様に自分の父親も、他の床屋も帰してくれるように頼むから」と言ってお城に向かいました。
お城についた床屋は、帽子をとった王様の耳を見てびっくり!
王様の耳はロバの耳
だったのです。そのことを知った他の床屋たちはみんな、秘密を守るためお城の牢屋に入れられていました。
若い床屋は町に帰ることは許されたものの、「王様の耳はロバの耳」だとしゃべったら父親の命はない、と脅されて、町の人達に本当のことを話すことができません。
そのために町の人たちから誤解され、困り果てた床屋は森に行って、森の木に向かって悩んでいることを話しました。
すると、森の精たちが「お言いなさいな、本当のことを♪」と歌いかけてきます。精たちに「本当のことをいうたびに人もふるさとも生き返る♪」と励まされた床屋は本当のことを言う決心をしました。
やがて、町中に森の木が口をきく、しかも「王様の耳はロバの耳」と話しているといううわさが流れます。
それを聞いた王様は怒って、森の木を切ってしまえ、と命令します・・・
「王様の耳はロバの耳」のキャラクター
床屋:町でたった一人残った若い床屋。明るく素直な青年。
王様:わがままで人の言うことを聞かない王様。
ニボシ・ナタネ:ニボシは年配の男性、ナタネは若い女の子で、町の住人のようでもありますが、物語を外からの視線で見て進行する狂言回しです。
<町の人たち>
ミリンボシ(木こり)、キリボシ(粉屋)、ウメボシ(おばさん)、など、乾物や漬物をイメージさせる名前を持っています。床屋の父親ナマボシは今はお城の牢屋に閉じ込められています。
スモモ、アンズ、といった果物の名前の娘もいます。
<お城の人たち>
ローストビーフ卿、将軍ボイルドエッグ、アブラハムハム侯爵夫人、詩人チキン、(役の名前がない)将軍
みんな、王様がこわいのでいつも王様に調子を合わせて決して王様の言うことに逆らいません。
黒い探偵:王様の悪口を言ったり噂をしている人を捕まえる密偵。町の人たちから賄賂を巻き上げています。
<森の精たち>
陽だまりの精、バラの精、蝶の精、露の精、綿毛の精、朝焼けの精、夕暮れの精といった、女性の姿の妖精たちと、男性の姿をした木の精(2人)、いばらの精がいます。
「王様の耳はロバの耳」のテーマ
寓話とは「教訓的な内容を、他の事柄にたとえて表したお話」です。イソップやその類型の「王様の耳はロバの耳」のお話の教訓は、
『秘密は必ず人に知られる、人の口に戸は立てられない』
である、と解釈されることが多いです。
劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」のテーマは、そこからもう一歩踏み込んで、
真実を言う勇気
だとされています。
でも、本当のことを言うことで自分が損をすることもあるし、思うことをすぐそのまま口に出すのがいいの?など、複雑な問題もはらんでいますよね。
舞台でも、狂言回しのニボシは「本当のことをいうのは、かんたんなようでなかなか難しんだ」と言っています。
「真実」とは「事実」とは違います。真実にはその人のものの見方や価値観も反映されます。
舞台を観て、
そうするのがよい、と信じたことに対して、自分はどう行動するか。
間違えたことに気が付いたらどうするか。
を考えたり、お子さんと話し合ったりできたらいいですね^^
私は、森の精たちが、「言ってあげたほうが王様のためにもいいのよ」と言うように、本当のことを言う動機が「愛」なのか、そうではないのか、がポイントなのかな、と思います^^
劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」の見どころ
音楽やダンス、衣装、セットのイメージは、公式PVを見てください。
昔話のおもしろさ
昔話をアレンジしてミュージカル作品にする場合でも、ディズニー作品のように「キャラクター」が物語をひっぱっていく、現代的な展開にすることもできるのですが、「王様の耳はロバの耳」では、昔話や寓話の、「むかしむかしあるところに」や「匿名の登場人物」をそのまま生かしています。
メインキャラクターである、王様、床屋には名前がありません。
ミリンバシやキリボシなどの町の人、ローストビーフ卿・ボイルドエッグ将軍などのお城の人には名前があるように見えますが、普通は人の名前にしない、食べものの名前にすることで、匿名性が強くなっています。
町の人は素朴な干物、お城の人は作品が作られた昭和40年にはおしゃれでモダンだった洋風の食べ物の名前がついている点が面白いですね。
森の精たちも、陽だまりの精、バラの精、という名前によって「妖精」としての特徴や個性が表されていますが、やはり、「唯一のその名」は持っていません。
昔話・寓話は、時代や場所が特定されないことや、登場人物が匿名であることで、
「このお話は、いつでも、誰にでも、これからの自分にもあり得ること」として受け取ることができます。
「王様の耳はロバの耳」も、他のファミリーミュージカル作品でキャラクターに思い入れするのとは少し違う形で、見ている人(子ども)が、自分を投影できるお話になっています。
寺山修司脚本のおもしろさ
自らも劇団を主宰し多くの著書も残した寺山修司ですが、「王様の耳はロバの耳」でも、独特の世界観を持った台詞、歌詞が楽しめます。
韻を踏んだセリフ回しは子どもたちにとっては「ことば遊び」の絵本のように感じられると思います。
ミュージカル、というと、「セリフの代わりに登場人物が歌う」というイメージがあるかもしれませんが、2幕で妖精たちが歌う、夜が深まっていく場面の歌の「レモンのような月が出た」などは、まさに「詩」で、とても美しいです。
また、元となっている寓話や昔話よりも「森」という自然の力を強調している点も秀逸です。
森の精たちは、人間の世界の権力を怖がらないので、何が大切なのかをストレートにとらえることができます。
さらには「木が切られても、木は人間の周りで家具や道具として生き続けるし、根が絶たれてもまた種から新しい木が生えて、ふたたび森になる」と王様が森に木を切りに来ることは自分たちには脅威ではないのだ、と言います。
「王様の耳はロバの耳」というキーフレーズ
舞台では、「王様の耳はロバの耳」というフレーズは、メインテーマの歌詞でもあり、セリフの中でも このフレーズはふしをつけて歌われています。
床屋が初めて王様の耳を目にしたときの、
「♪王様の耳は ロバの耳ー♪」
は、彼の驚きを表し、
陽だまりの精が、会話の中で
「♪王様の耳は ロバの耳♪」
と言うと、彼女が人間の世界のルールに縛られない異界の住人であることを表すなど、
非常に効果的に使われています。
客席参加型の演出
「王様の耳はロバの耳」では、
開演前の「幕を開ける歌」では、すべてのキャクラターが幕の前に並び「これからお芝居を始める」という意味の歌を歌う
劇中で、床屋や町の人達を応援するために客席も一緒に歌う場面があり、歌の練習もする
など、客席参加型の演出が、ファミリーミュージカルの中でもかなり多く盛り込まれています。
小さなお子さんにとっては少し長く感じられるかもしれない上演時間中も、きっと楽しく過ごせると思いますよ。
ファミリーミュージカル作品恒例の終演後ロビーでのお見送りは、「王様の耳はロバの耳」でも行われますので、お気に入りのキャラクターとぜひ近くで会ってくださいね。
森の精たちのクラシックバレエ
「王様の耳はロバの耳」の、森の精たちの歌「森はいつでも生きている」では、森の精たちはクラシックバレエをベースにした振りを踊ります。トゥシューズこそ履いていませんが、かなり本格的なバレエの振りです。
また、四季の会会報誌「ラ・アルプ」2018年4月号で、作曲家の青島広志氏が寄稿された文の中で、
とコメントされていました。
クライマックスで、町の人+森の精VSお城の兵隊たちが異なる曲を二重に歌う場面は、一見違うメロディーが重なってハーモニーを作り、それぞれの言葉の意味も分かる、という多重唱の手法です。
この手法は、劇団四季の「オペラ座の怪人」や『リトルマーメイド』でも使われています。
劇団四季ファミリーミュージカル「王様の耳はロバの耳」はここが楽しい! まとめ
「王様の耳はロバの耳」は、誰もが触れたことがあるだろう寓話(昔話)をベースに、子どもが親しみやすいように構成されています。
一方ではクラシック音楽やクラシックバレエなどの要素がふんだんに使われている、豪華な舞台です
PVを見ていただくと分かりますが、衣装の質感も、
- 町の人の素朴な衣装
- お城の人のゴージャスな衣装
- 森の妖精たちのファンタジックな衣装
と区別されており、ロビーのお見送りではそれをまぢかで見られるのも楽しいですよ。