この記事では、劇団四季『ライオンキング』2018年7月以降の主な変更点について(ただし、あおなみが分かる範囲ですが)まとめました。ま
2018年12月に、日本上演20周年を迎える『ライオンキング』。2017年には上演回数1万回を超え、日本でもっとも多く上演されているミュージカル作品です。
20年間、まったく同じものを上演しているのか、というとそうではなく、2017年5月の四季劇場「春」クローズ(芝地域再開発のため)から四季劇場「夏」への引っ越しの間に、それまでよりも大きい演出変更がありました。
それまでも、「準備しろ!」のハイエナダンスの振付が微妙に変わっていたり、
ティモンとプンバァのご当地言葉がその時の若い人にわかりやすいものに変わったり、
という細かい変更は加えられてきていますが、
ここまで、前と後の違いがはっきり分かる変更は『ライオンキング』では初めてだったと思います。
『ライオンキング』2017年7月以降の演出変更について
いつどのように変更したの?
2017年6月~7月の、東京公演劇場引っ越し期間の間で、
アメリカのディズニーシアトリカルから来日したスタッフによる、ブラッシュアップ稽古時とワークショップが行われ、その際に演出変更がありました。
ただ、ブロードウェイで現在上演されているバージョンと全く同じにしたわけではないようです。
(BWでは「モーニングリポート」は全カットされている、と数年前にBWで観劇した方のツイートで見たことがあります)
札幌公演については、2018年の2月のシステムメンテナンスによる休演期間中に変更が行われました。
ですから、東京で演変更した後も、札幌では8ヵ月程度変更前のバージョンで上演されていたことになります。
(会報誌「ラ・アルプ」、劇団四季公式twitter、当時の飯村和也さんのラジオインタビューなどより)
例1)
シンバ役とナラ役の俳優が、お互いの初恋の体験を話し合ったり、
ヤングシンバとヤングナラの子役に、「愛を感じて」の恋のシーンを演じてもらい、子ども同士だから照れてしまう様子を見ることで、子供時代以来久しぶりに再会したシンバとナラが、初めて「恋」を意識する初々しさを感じ、表現する。
例2)
スカー役同士が、「オペラ観劇に来るとそこに『自分自身』がいた」という設定で、お互いに相手に席を譲り合う(高貴な人ほど最後に座るということみたいです)、
例3)
スカー役同士の説得合戦、というワークも行われています。
スカーがハイエナたちを説得し、王国を乗っ取ろうとするナンバー「覚悟しろ」。スカー役を演じる道口瑞之と飯村和也で、説得力を競い合うことに。ステファニック氏も加わり、説得合戦は白熱。この体験を生かした道口の「覚悟しろ」は、エネルギーが爆発!稽古場が大いに沸きました。 #LKお引越し pic.twitter.com/8E5mWZBxpF
— 劇団四季 (@shiki_jp) 2017年7月14日
主な演出変更点
1幕
・ザズのセリフ
「子どものころに頭でもぶつけたんじゃありませんか」追加
・メスライオンの狩り
赤いレイヨウの歌のメロディ変更
・「チャウダウン」の間奏部分カット
・スカーのセリフ
「あの子どもを、殺せ」⇒「・・・殺せ」
2幕
・「One by One」メロディーの変更
・「スカーの狂気(スカーの歌の部分)」カット
・シンバ「どうしたんだろう、ティモン」~ティモン「俺の目はちっちゃくなんかねえ、でっけえでっけえ」の会話をカット。
・「愛を感じて」
間奏部分カットに伴い、男女2組のフライングと1組のセンターダンスがなくなりました。
シンバとナラのパドドゥの振り付け、ジャングルの植物であるアンサンブルの振り付けや立ち位置も大幅に変更になっているので、この場面が一番変更が大きかったように見えます。
ナラの歌詞「愛しあうなら私を信じて」⇒「そう、愛し合うなら私を信じて」
・ティモンのセリフ
「あのエテコウは」⇒「あのサルは」
・ティモンのセリフ
「女のナリでチャールストン踊ってほしいってか?」⇒「女の恰好でダンス踊ってほしいってか?」
・シンバのセリフ
「そんなこと僕の中はとっくにすんでしまったことなんだ」⇒「僕は前を向いて生きることにしたんだ」
やはり一番大きな変更点は、「愛を感じる」の場面ですね。
思春期になって再会したシンバとナラが、幼なじみの関係から、恋の相手としてお互いを意識するようになる、という展開を、以前は、肌色のレオタードに花とツタを絡めた姿の、森の精霊たちのパドドゥで抽象的に表していたのですが、変更後は、シンバとナラ自身の演技で表現するようになっています。
この動画は『ライオンキング』札幌公演のイベントで、曲は「サークルオブライフ」なのですが、
間奏部分の男女のパドドゥ(ペアダンス)は、変更する前の「愛を感じて」のセンターダンスの振り付けになっています。
動画の3分12秒くらいからです。
ダンサーは、ツェザリ モゼレフスキーさんと松尾 優さん。
ツェザリさんのパンシェが非常に美しいので必見です。
個人的には、このダンスはすごく好きだったので、見ることができなくなってしまったのは残念ですが、
冷静に考えると、演出効果としては、
ジュリー・テイモア氏の前衛性がやや行き過ぎて、全体のトーンから浮いている感が無きにしも非ずだったのかもしれません。
今の演出の方が作品の全体のバランスが取れていて、「シンバとナラが、大人の男女の関係に近づいていく」という場面の意味も伝わりやすくなっているのだと思います。
センターダンスやフライングは、何度も観劇すると、もう「そういう場面だ」と思っていましたが、
初めての方は「なぜ唐突に半裸の(実際にはレオタード着ていますが)人間の男女が・・・?」みたいなところがあったのではないかと。
変更前後が分かる動画
「One by One」の、旧バージョンと新バージョンの動画を並べてみました。
<変更前(札幌公演歌稽古)>
(シンガーリーダー=五十嵐 春さん)
<変更後(東京公演歌稽古)>
(シンガーリーダー=南 晶人さん)
ただ、歌稽古の動画は、どちらも途中が少しカットされているので、下の札幌イベントの動画の方がカットなしで、比較するのに分かりやすいかも。
<変更前(札幌公演2017年11月17日発寒AEONイベント)>
<変更後(札幌公演2018年4月14日発寒AEONイベント)>
変更前は、西洋音楽の音階やリズムにややアフリカン風味、という感じでしたが、
変更後はより、民族色が強くなっている印象があります。
「メスライオンの狩り」の、赤レイヨウの歌も同じような感じで変わっています。
まとめ
変更前と変更後の違いは、
私の印象では、
アフリカンミュージックの部分がよりフォークロアな感じ(普段耳慣れない音階やリズム)になった
です。
以前の演出や曲も良かったし、そちらになじみがあるという面は、私ももちろん、あるのですが、最初に書いたように、『ライオンキング』は2018年12月20日には劇団四季上演20周年を迎える、という年月を経た作品です。
これからも上演され続ける作品であるために、やはり、初演時の形のまま繰り返しているわけにはいかなくて、少しずつ変化していることが必要なんだろうなと思います。
ちなみに、2018年元旦に、初めて変更後を観た家族には、とても評判が良かったです。